- 2013〜2015年度は「Hib、肺炎球菌、HPV及びロタウイルスワクチンの各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究(厚生労働科学研究費補助金 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業、日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業) 」で小児侵襲性細菌感染症の人口ベースアクティブサーベイランスを実施した。
- 2016〜2020年度は「ワクチンの実地使用下における有効性・安全性及びその投与方法に関する基礎的・臨床的研究(日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業)」において、サーベイランスを継続した。
- 上記研究期間に以下の論文を公表した。
- Suga S,et al. Nationwide population-based surveillance of invasive pneumococcal disease in Japanese children: Effects of the seven-valent pneumococcal conjugate vaccine. Vaccine. 2015; 33: 6054-60.
2008年から2013年にかけて、10道県において5歳未満小児を対象としたIPD人口ベースアクティブサーベイランスを実施し、PCV7の効果を評価した。1181例が報告され、711例の血清型と薬剤感受性を解析した。ベースラインデータと比較して、ワクチン導入後はPCV7含有血清型肺炎球菌によるIPD罹患率が98%減少した。しかしながら、ワクチン非含有血清型肺炎球菌によるIPDの増加があり、IPD全体の罹患率減少は57%であった。PCV7導入後は、メロペネム非感受性の菌が、特に血清型19Aと15Aにおいて有意に増加していた。今後も血清型と薬剤感受性に関する継続的な監視が重要である。 - Suga S,et al. Nationwide population-based surveillance of invasive Haemophilus influenzae diseases in children after the introduction of the Haemophilus influenzae type b vaccine in Japan. Vaccine. 2018; 36: 5678-84.
2008年から2017年にかけて、10道県において5歳未満小児を対象とした侵襲性インフルエンザ菌感染症の人口ベースアクティブサーベイランスを実施し、Hibワクチンの効果を評価した。566例が報告され、うち336例が髄膜炎であった。ベースラインデータと比較して、2013-2017年の罹患率は93%減少した。Hibは2014年以降は分離されなかった。しかしながら、無莢膜株の増加がワクチン導入後に著しかった。本研究により、Hibワクチンにより本邦の侵襲性Hib感染症は激減したことが明らかになった。
- Suga S,et al. Nationwide population-based surveillance of invasive pneumococcal disease in Japanese children: Effects of the seven-valent pneumococcal conjugate vaccine. Vaccine. 2015; 33: 6054-60.
2013/1-2020/12 小児 IPD 由来肺炎球菌の血清型分布(n=769)
小児IPD症例の血清型サーベイランスの評価
2008~2010年(ワクチン導入前)の罹患率(5歳未満)と比較し、2020年は
- 髄膜炎 90.0%減少
- 非髄膜炎 75.9%減少
- 侵襲性肺炎球菌感染症 77.5%減少
2020年の血清型分布
- PCV13含有株:3% PCV13非含有株:97%
- PPSV23含有株:29%
基礎疾患保有状況
小児(15歳未満)IPD患者の基礎疾患の詳細(2014-2019)

肺炎球菌性髄膜炎の状況
小児髄膜炎由来肺炎球菌株の血清型分布

小児髄膜炎由来肺炎球菌株のPCG感受性比較

肺炎球菌性髄膜炎のまとめ
- PCV13導入後、PCV13含有血清型株が減少した。
- PCV13導入後のPRSPは、全体の35.8%であった。
- 初期治療選択薬として、発売中止となったPAPM/BPが多く使用されていた。CTX(CTRX)+VCM使用例は、全体の26.4%であった。
- 初期ステロイド使用例は、全体の65%であった。
- 予後不良例は9例あり、予後判明例の20%を占めていた。基礎疾患ありは2例のみ。全て非PCV13非含有血清型株であった。